ツボクサの成分と、抽出法による性質、及びメカニズム
1.ツボクサ(Centella asiatica)の有効成分について
ツボクサ(Centella asiatica)は、セリ科の多年草であり、アーユルヴェーダや伝統中国医学において古くから利用されてきた植物です。
近年では皮膚科学および化粧品分野において、その成分特性が再評価され、Centella asiaticaから略してCICAと呼ばれて知られる様になりました。
ツボクサの主要な有効成分は、以下のトリテルペノイドサポニン類です。
アシアチコシド(Asiaticoside)
マデカッソシド(Madecassoside)
アシアチン酸(Asiatic acid)
マデカシン酸(Madecassic acid)
これらは総称してセンテラトリテルペンと呼ばれ、皮膚においては以下の作用との関連が報告されています。
線維芽細胞の活性化に関与
コラーゲン(特にI型)合成過程への関与
酸化ストレス環境下における細胞応答の調整
炎症性サイトカインの過剰産生の抑制方向への寄与
また、ツボクサにはフラボノイド類、ポリフェノール、微量ミネラルも含まれており、これらが相乗的に皮膚バリア機能を支持する方向に働くと考えられています。
2.水抽出とアルコール抽出の違いによる抽出物の性質
植物成分の抽出において、溶媒の違いは抽出される成分組成を大きく左右します。
水抽出の場合
水は極性の高い溶媒であり、以下の成分を主に抽出します。
水溶性多糖類
一部のフラボノイド
アミノ酸類
無機塩類
ツボクサの水抽出物は、保湿・皮膚表面の環境調整といった穏やかな作用を示す傾向があり、刺激性が低い一方で、トリテルペノイド類の抽出効率は比較的低くなります。
アルコール抽出の場合
エタノールは水と脂溶性成分の双方を溶解可能な中間的性質を持つため、
トリテルペノイドサポニン類
脂溶性フラボノイド
抗酸化関連成分
を効率よく抽出することができます。
特に無水エタノールを用いた場合は、細胞膜親和性の高い低分子成分が多く含まれる抽出物となり、皮膚表面に留まるだけでなく、角質層への浸透性を持つ組成となる点が特徴です。
その反面、アルコール抽出物は濃度や使用方法を誤ると刺激要因となり得るため、希釈および使用量の管理が重要となります。
3.アルコール抽出ツボクサによる非皮膚細胞修復補助のメカニズム
アルコール抽出によって得られるツボクサ成分は、表皮細胞そのものを「修復する」というよりも、修復が起こりやすい細胞環境を補助的に形成する点に特徴があります。
トリテルペノイド類は、皮膚に存在する以下の細胞群に間接的に作用すると考えられています。
線維芽細胞
内皮細胞
免疫関連細胞(マクロファージ等)
これらの細胞に対し、
過剰な炎症反応の抑制方向へのシグナル調整
細胞外マトリックス(ECM)合成環境の支持
酸化ストレス下における細胞生存性の維持
といった作用が報告されており、
結果として皮膚組織全体の恒常性(ホメオスタシス)維持に寄与すると考えられます。
重要なのは、これらの作用が薬理的な治療効果ではなく、あくまで生体反応の補助である点です。
アルコール抽出ツボクサは、損傷部位を直接「治す」のではなく、修復が進行しやすい環境を間接的に整える素材として位置づけるのが適切でしょう。
ツボクサを使った自作化粧品の作り方
詳しい理論や成分については、専門家にお尋ねされるなり、専門書等をご参照ください。
ここでは、比較的取り組みやすい方法をご紹介します。
① ツボクサチンキの作り方
準備するもの
無水エタノール
(水分をほとんど含まないアルコール。揮発しやすく、ドラッグストアでは健栄製薬の400ml入りが1,050円)から購入drきます。
乾燥ツボクサ(茶葉)
口が広く、しっかり蓋が閉まる瓶
※できれば遮光瓶(お酒や薬に使われる茶色の瓶)がおすすめ
下準備
瓶は、煮沸消毒またはアルコール消毒を行い、十分に乾かしてください。
作り方
重量比で
乾燥ツボクサ:無水エタノール=1:10
の割合で瓶に入れます。
しっかりと蓋を閉めて下さい。ゆるいとアルコール分が蒸発します。
直射日光の当たらない冷暗所に置き、できれば毎日1回、軽く振って攪拌します。
2週間~1か月ほどで抽出が完了します。
仕上げ・保存
ツボクサを濾し、別の容器に移します。
※長期保存する場合は、遮光性があり首の細い薬瓶タイプがおすすめです。
冷蔵庫で保存すれば、約1年保存可能と言われています。
これでツボクサチンキの完成です。
② 手作りチンキを利用したツボクサ化粧水の作り方作り方
消毒した小瓶を用意します。
ツボクサチンキ:水=1:6
の割合で混ぜます。
(水は精製水が望ましいですが、水道水でも可)
よく振って混ぜれば完成です。
これに保湿剤としてグリセリンを5~10%を加えると肌がしっとりとしてきます。10%を超えると逆効果となるので注意。
※使用前には必ずパッチテストを行ってください。
③ コストの目安
乾燥ツボクサ50g:約2,600円程度
無水エタノール (健栄製薬 400ml:約1,050円~)
グリセリン (健栄製薬 100ml:581円~)
合計約4,300円で約400mlのツボクサチンキ、約2.4リットル分の化粧水を作ることが可能です。
大量になりますからグループでつくられるのが良いかと思います。
④ 応用について
保湿剤については修復型ヒアルロン酸をお使いになっても構いません。約2.5%を加えて下さい。
防腐剤を入れる場合は植物性防腐剤エキスを0.5~1%入れるのが良いでしょう。色々な種類がありますからお調べになってお使い下さい。
また、チンキのアルコールを揮発させて濃縮し、市販のクリームに混ぜることでツボクサクリームを作ることもできます。
※詳しい方法や安全性については、ご自身で十分にお調べください。
原料用ツボクサ
ツボクサ乾燥葉(原料用)
本レシピで使用しているツボクサは、乾燥処理を施した葉部のみを使用した原料用素材です。
ツボクサ(Centella asiatica)は、伝統的にスキンケア素材として活用されてきたハーブの一つで、
現在ではナチュラルコスメ分野においても広く研究・応用が進んでいます。
本品は、飲用グレードの選別基準から外れた等外乾燥葉ですが、
抽出・浸漬・煎出といった外用用途においては問題なくご使用いただけます。
原料の特性
・葉のサイズにばらつきあり
・色味に個体差あり
・割れ葉・欠け葉を含む
見た目の均一性よりも、加工用途での実用性を重視される方向けの原料です。
細かく裁断してチンキや浸出油に使用する場合、形状差はほぼ影響しません。
推奨用途
ハーブチンキ(アルコール抽出)
グリセリン抽出液
インフューズドオイル
ハーブバス素材
ハーブ蒸留
石鹸・ヘアケア基材
※食品用途には推奨しません。
業務用には別途ご相談下さい。
抽出のポイント
ツボクサは水溶性・脂溶性両成分を含むため、
目的に応じて抽出溶媒を選択することで、より応用幅が広がります。
・水抽出 → ハーブウォーター・化粧水ベース
・アルコール抽出 → チンキ原料
・油脂抽出 → バーム・軟膏基材
素材を理解した上での処方設計をおすすめします。
コストメリット
本原料は等外規格のため、通常品より約25%お求めやすい価格設定となっています。
試作・研究用途・定期制作をされる方に適しています。
今回は無水エタノールを抽出液として使用しましたが、化粧品製造など工業用としてはツボクサを抽出するアルコールはBG(BG:1,3-ブチレングリコール)が多く使用されます。
これは他の物質と配合し易く、グリセリンなどに比べてベタつきが少なく、浸透力が高いためで、化粧水や美容液、乳液など幅広い製品に応用可能です。
価格は高くなりますが、ネットで市販もされていますので、ご使用されたい場合は各自お調べください。
自作化粧品でご使用の場合はサトウキビなどを原料とした、植物由来のBGが良いでしょう。
お肌の性質は個人により異なります。出来上がった物は、腕などでパッチテストをしてから使用して下さい。そしてこの記事は私が実際に行った事を述べているのであり、実行される方はより詳しい資料や、指導者の下で行われる様お願い申し上げます。また全て自己責任である事もお約束願います。
これまではチンキや化粧水を作る熱湯やアルコール抽出について説明してきましたが、クリームや石鹸を作る時の抽出方法として、油脂抽出方法があります。
① 低温長期浸漬法(おすすめ)一番失敗が少ない方法です。
🔹 材料
・乾燥ツボクサ(刻み)
・植物オイル(以下がおすすめ)
→ ホホバ油
→ 太白ごま油
→ オリーブオイル(精製タイプ)
比率:
乾燥葉 1 : オイル 5〜10
例:
ツボクサ20g
オイル200ml
🔹 手順
① 煮沸消毒したガラス瓶にツボクサを入れる
② オイルを完全に浸るまで注ぐ
③ 軽く振る
④ 冷暗所で2〜4週間保存
⑤ 毎日軽く振る
⑥ コーヒーフィルターで濾す
完成。
② 湯煎加温法(早く作りたい場合)
3時間で作れます。
① ツボクサとオイルを耐熱瓶に入れる
② 60℃以下の湯煎で2〜3時間
③ 絶対に70℃を超えない
④ 濾す
完成。
※ 高温は成分を壊します。
保存
・遮光瓶
・冷暗所
・3〜6ヶ月以内使用
ビタミンE(トコフェロール)を0.5%入れると酸化防止になります。
石鹸に使う場合
コールドプロセス石鹸なら
・全オイルの10〜20%をツボクサ浸出油に置き換え
クリームやバームなら
・そのまま基材オイルとして使用可能
プロっぽく言うなら「オレオライト抽出(Oleolite Extraction)」と呼ばれます。
⚠ 注意点
・必ず完全乾燥葉を使う(カビ防止)
・生葉はNG(腐敗します)
・水分混入は絶対避ける
家庭で作りやすく安全です。
🔹 基本レシピ(50g分)
油相
・ツボクサ浸出油 10g
・ホホバ油 5g
・ミツロウ 2g
水相
・精製水 30g
・グリセリン 3g
乳化ワックス 2g
🔹 作り方
① 油相を湯煎で溶かす(60℃以下)
② 水相も同温度に温める
③ 水相を油相へ少しずつ加えながら撹拌
④ とろみが出たら冷ます
⑤ 防腐剤(必要なら)添加
完成。
🌿 簡単バーム(乳化なし)
もっと簡単にするなら:
・ツボクサ浸出油 20g
・ミツロウ 3g
湯煎で溶かして容器に入れるだけ。
→ 保湿用万能バームになります。
ツボクサ石鹸(コールドプロセス法)
※ 苛性ソーダを使うので手袋・ゴーグル必須
🔹 基本レシピ(約6〜8個分)
油脂合計 500g
・オリーブ油 250g
・ココナッツ油 100g
・パーム油 100g
・ツボクサ浸出油 50g(全体の10%)
苛性ソーダ 約70g
精製水 175g
(※ 正確な鹸化値計算は必須です)
🔹 作り方
① 苛性ソーダを水にゆっくり入れる(逆は危険)
② 40℃前後まで冷ます
③ 油脂を混ぜて40℃前後にする
④ 苛性ソーダ水を油に加え撹拌
→ トレース(とろみ)が出るまで混ぜる
⑤ 型に流す
⑥ 24時間保温
⑦ 型出し後、4週間乾燥熟成
完成 🌿
🔎 ポイント
✔ ツボクサ油は後半に入れると香りが残りやすい
✔ 過度な加熱を避ける
✔ 乾燥期間は必須